政治の世界では、同じものを別な言い方で都合良く表現することが良くおこなわれます。たとえば、核兵器は、相手が持てば「大量破壊兵器」で、自分が持てば「抑止力」ということになっているようです。廃棄物処分場の「管理型」「安定型」というのも、なんとなくそんな感じがします。
廃棄物の最終処分場は、大きく分けると3種類になります。「安定型」「管理型」「遮蔽型」です。このどれもが、言葉としてのマイナスイメージはありません。しかし、実態は、次のようになっています(*01)。
「安定型」=管理しない=遮蔽しない
「管理型」=非安定ごみ=遮蔽しない(遮水する)
「遮蔽型」=有害物質=(将来の新技術を期待して)一定の管理
こうしてみると、最終処分場を区分するときに、あえて負のイメージが出ないような名称を使っているということがわかります。「安定」も「管理」も「遮蔽」も、すべて安心や安全に結びつく単語です。マイナスの面を隠して、プラス面だけを強調していると言って良いでしょう。
先日、近所の人と話をしたときに「馬頭最終処分場」の話がでました(*02)。その人は処分場の建設に賛成の立場でしたが、どのような処分場ができるかについては、よく知らないようでした。
町も県も、最終処分場についてくりかえし説明しているのですが、「多重安全システムを備えた安全で安心できる最終処分場」というだけで「管理型=非安定型」なのか「安定型=非管理型」なのかということや、その具体的な違いについては、積極的にPRしていません。せいぜい、汚れた水が流れ出さないように管理するという程度の説明です。もっぱら、安全対策が十分なことや、町への支援、そして北沢地区の不法投棄処理などを前面に押し出しています。
もうすでに動き出している処分場計画ですが、処分場に賛成するにしても反対するにしても、どんな処分場ができるのかについての正確な知識が必要でしょう。その上で、判断をしたいものです。つたない説明になるかもしれませんが、私なりにまとめてみましょう。
那珂川町に計画されている処分場は
「県営管理型最終処分場」
です。正式名称ではありませんが、どのような処分場かということを端的に表すと、このような名称になります(*03)。
分解すると、「県営」「管理型」「最終」「処分場」です。この計画の当初は、もうひとつ「産業廃棄物」というキーワードも加わっていたのですが、最近の県の最近の説明では、この言葉が消えています(*04)。このことについては、また別な機会に述べることにして、ここでは「管理型」の部分を中心に説明していきます。
では、「管理型」の処分場というのは、どのようなものでしょうか。すでに述べたように、「管理型=非安定型」です。廃棄物は「安定廃棄物」と「非安定廃棄物」に分かれます。ざっくり言えば、そのうちの「非安定廃棄物」を処分するのが、管理型の処分場です。
安定廃棄物というのは、法律で決められていて「廃プラスチック類」「金属くず」「ガラス陶磁器くず」「ゴムくず」「がれき類」です。これを「安定5品目」といいます。これらのゴミは、状態が安定しているので、そのまま地面に埋めてしまうことができるということになっています。特別な管理も必要ないというわけです。
それ以外のゴミは、時間の経過とともに状態が変化します。したがって管理が必要ということです。溶け出して水質が汚染したりする可能性があるので、ゴムシートなどで遮断して、地下水脈などに流れ出さないように厳重に管理しなくてはなりません。雨水も入り込まないようにする必要があるでしょう。もしも浸出水があれば、それは処理施設を設けて、汚染を取り除いてから排水することになります。
では、管理型の処分場は、具体的には、どのような廃棄物を受け入れることになるのでしょうか。
前述のように、もうひとつ「遮蔽型」処分場というのがあり、一定の基準値を超えた「重金属」や「有害化学物質」が含まれている場合は、コンクリートで囲むなどの遮蔽構造物を使って、将来、処理技術が開発されるまで、厳重に保管することになっています。
その基準に達しない程度の低濃度の有害物質と安定5品目以外の廃棄物、つまり「遮蔽型」と「安定型」で受け入れることのできないすべての廃棄物を受け入れるのが、管理型処分場なのです。誤解を恐れずに言えば、いろいろなものを受け入れるので、何が起こるか分からないから管理が必要ということでしょう。
で、先ほどの「県営管理型最終処分場」という言葉をもう一度みてみましょう。「県営」、すなわち管理は栃木県がおこないます。そして「最終」の処分場です。つまり、この先は無いわけです。その場所で、そのまま安定化をはかるということです。
聞いたことのある人が多いと思いますが、「中間」処分場というのもあり、そこでは減量化(焼却など)がおこなわれます。その結果(たとえば焼却灰)が最終処分場に持ち込まれます。
そこで、気になるのは管理レベルです。県の発表では、たとえば排出される水(浸出水)の処理は、「飲料水レベルまで浄化する」としています。また、県の「見解」によれば、埋め立てが終わってからも、処分場が廃止されるまでは浄化処理を続けるとしています。ちなみに、処分場が廃止されるのは、浸出水の水質が「法令等に定める基準に適合する状態」になった後ということです(*05)。
このように手間のかかる施設なので、安定型の最終処分場に比べて、管理型の最終処分場は、ずっと数が少ないのが現状です。また、中間処理の精度を高めて、管理型で処理しなければならない廃棄物の量を減らす努力もおこなわれています。
栃木県には、安定型の最終処分場や中間処理場はたくさんあるのですが(*06)、管理型の最終処分場はひとつもありません。このため県営の管理型最終処分場をつくることが県政の重要課題となっています(*07)。「馬頭最終処分場」が完成すれば、栃木県で唯一の管理型最終処分場ということになります。
那珂川町に計画されている「馬頭最終処分場」は、このような処分場です。
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*01 最終処分場 - フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%80%E7%B5%82%E5%87%A6%E5%88%86%E5%A0%B4
*02 旧馬頭町の備中沢地区に建設を予定している廃棄物最終処分場。このブログでも、何度か話題にしている。
「不法投棄廃棄物を現状のまま放置するという選択肢」(2006/8/26)
http://blog.nakagawamachi.net/?eid=344337
「匿名のメール」(2006/2/22)
http://blog.nakagawamachi.net/?eid=179224
*03 栃木県の「馬頭最終処分場」Webページの冒頭に書かれている。
http://www.pref.tochigi.jp/bato/keikaku/batou/batou.html
*04 下記ページの「いただいた意見と県の見解」
http://www.pref.tochigi.jp/bato/keikaku/batou/sekkei_asesu_kettei.html
(県が発行するPR誌「グリーンライフばとう」を通して読むと平成17年から論調が変わっていることがわかる)
http://www.pref.tochigi.jp/bato/keikaku/batou/50kouhou/glb.html
*05 筆者には、基本計画の説明会の質疑応答で、埋め立てが終わってから10年程度と説明されていた記憶があるのだが、資料で確認することができなかった。そこで、この部分は上記の「いただいた意見と県の見解」から引用している。
*06 平成17年度末現在、中間処理施設は386施設(事業者が設置しているものが58施設、処理業者が設置しているものが328施設)、安定型最終処分場は44施設(うち残余容量があるものは19施設)である。
*07 「とちぎの廃棄物(平成16年)」など
http://www.pref.tochigi.jp/eco/haikibutsu/haikibutsu/tochihai_16.html
栃木県のWebサイトはリンク切れが多く、収録してある資料(PDF)がダウンロードできなくなるおそれがあるので、筆者のWebサイトにコピーしておく。
【資料】
とちぎの廃棄物(平成16年度版).pdf (435KB)
http://nakagawamachi.net/pdf/haikibutsu16.pdf
とちぎの廃棄物(平成17年度版).pdf (648KB)
http://nakagawamachi.net/pdf/haikibutsu17.pdf
栃木県廃棄物処理計画(改訂版).pdf (1271KB)
http://nakagawamachi.net/pdf/haikisyori18.pdf

